若い頃 進化とは新たな技術をどんどん増やしていく事だと思っていました。自分が進化していく事へわくわくした高揚感で溢れていました。
しかし最近 進化とは大切な物を捨てて行かなければ成り立たない物なのだとつくづく思い知らされています。進化しなければ生き残れず断腸の思いで捨てていく。それこそが進化の意味なのだと。
2012年に「スタンドシャンプー」を捨てました。捨てるというのはすなわち「やらない」という事です。快適なヘッドスパを提供する「癒しの理容室」になるためでした。
理容師にとって 刈り上げ スタンドシャンプー シェービング マッサージの習得は努力の賜物です。何年もかけて上達していくのです。手首が柔らかく動かないと出来ず「左手を制する者は理容道を制する」と言われるぐらい右手と左手同じくらいに動く事を強いられます。
私はもともと左利きでした。幼い頃に右利きに直されたのであまり苦労はしませんでした。それでも上手くなりたくて2年ほど左手を使って生活していたのを思い出します。
結構器用な方ですがそれでも理容師の技術習得は難しかったです。シェービングでは「斜行」という技術がもっとも難しい。上手くなるようにといって替刃ではなく「本レザー」という研いで使うレザーで練習させられました。本レザーは斜行しないと全く剃れません。そして手首を使い斜行しながら丸く回転させて剃ります。どうせ替刃で剃るのに?という理不尽な思いもありましたが腕はめきめき上達しました。今もこの技術は当店のシェービングに生きています。
そんな経緯で身につけた私の技術ですが 今また「髭剃り」をしないという選択肢を増やしました。
性能の良いシェーバーも出てきていて「自分でも剃れるのになんで?」と思うお客様も多くなったのです。
お髭は剃りませんがご自身では難しい産毛やお耳を剃って行こうと思います。
今回は全く髭剃りをしないという事ではありませんがやはり断腸の思いです。「綺麗になった」と喜ぶお客様の顔を思い浮かべてまた進化しようと思います。
癒しの理容室理容かんの 店主
https://www.iyashinokanno.com